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名古屋高等裁判所 昭和24年(控)321号 判決 1949年7月25日

被告人

塚原俊市

主文

本件控訴は之を棄却する。

当審に於て生じた訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

弁護人加藤謹治控訴趣意書第一点

被告人は本件の從犯である。即ち「問」其の家から帰りに被害者の家の前を通つたとき地橫が家の中に先に入つた際に何か被害者の家の前を通つたとき橫地が家の中に先に入つた際に何か被告に言つたか「答」ちよつと待つていて呉れと言いました「問」見張をして居れと言ふ意味か「答」左樣です「問」そして待つて居ると雨合羽と洋傘を持つて來たが其の時に被告に何か言つたか「答」這入り易い家だから一緖に這入ろうと誘はれ本件の盜みを致しました(以上記録四六丁表参照)弁護人金子栄次郞は「…弁護人としては塚原の供述調書の方が正しいものと思ふとの意見を述べた」(記録一七丁裏参照)右に述べた如く被告人は相被告人に誘はれ窃盜の見張役を勤めたに過ぎず從犯である。

と謂うに在るけれども

数人が窃盜の実行を共謀した場合に於て、共同正犯の成立するが爲には、必ずしも各共謀者が窃盜の構成要件である実行行爲の全部に加工することを要するものではなく、其の一部に加工した場合は勿論実行行爲に属しない展外の見張と謂うように行爲に関與した場合に於ても、之を以て足ることは夙に大審院の判例が説示するところである。然らば仮に被告人が所論のように原審相被告人橫地実から誘われ窃盜の見張役を勤めたに過ぎないとしても、直に之を以て窃盜の從犯を構成するに過ぎないものとは解し難く、況んや原判決が挙示して居る被告人の原審公判廷に於ける供述、檢察事務官の被告人及原審相被告人橫地実の両名に対する各供述調書に依れば、被告人は原審相被告人橫地実と原判示の岡こいし方に於て窃盜しようと共謀の上、自らも前記橫地実と共に右岡こいし方に侵入して、原判示の靴四足を窃取して來た事実即ち窃盜の構成要件である実行行爲に加工した事実が認め得られるので、原判決が被告人に対し原判示事実を認定し之を窃盜の共同正犯に問擬したのは正当であり、原判決には所論のような違法の廉が発見されないから論旨は其の理由がない。

以下省略

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